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広島高等裁判所 昭和42年(ネ)122号 判決

控訴人 広島一般労働組合

右代表者組合長 畑友一

右訴訟代理人弁護士 阿左美信義

同 山田慶昭

同 原田香留夫

同 相良勝美

被控訴人 古田芳臣

〈ほか五八名〉

主文

原判決を次のとおり変更する。控訴人は被控訴人らに対し、別紙預託金計算書(二)記載の当該被控訴人らの各預託元利金および右各預託元金に対する昭和四一年二月一九日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一、当事者双方の申立

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

≪以下事実省略≫

理由

第一当事者間に争いのない事実

被控訴人らが広島工業株式会社の従業員であり、被控訴人らのうち別紙当事者目録記載の番号37古田佳人、同40景出光芳、同42生田頼人の三名を除くその余の被控訴人らが昭和四〇年一二月一七日まで控訴人組合の個人加入の組合員であったこと、同日頃同被控訴人らが控訴人に対し控訴人組合を脱退する旨の通告をしたことは、いずれも当事者間に争いがない。

第二請求原因事実に関係する基本的事実の確定

一、≪証拠省略≫を綜合すれば、次の事実が認められる。

(一)  被控訴人らが勤務する広島工業株式会社は、従来からしばしば従業員に支給する賃金、手当を遅配することがあったため、控訴人組合に加入していない非組合員を含めた被控訴人ら広島工業株式会社の従業員は、自力による賃金等の一時補填を図る必要上、各人の能力に応じて各人毎に毎月一定の金額を積み立て、これを団体名で一括して労働金庫に団体予金し、賃金等の遅配を生じた場合、右予金を担保に労働金庫から一時金員を借り入れて賃金等に補填する目的のもとに、昭和三六年一月頃から労働金庫に対する団体積立予金を始めた。当時広島工業株式会社の従業員の大部分は控訴人組合に加入する組合員であり、控訴人組合の下部組織にあたる広島一般労働組合広島工業支部の構成員であったところから、右の積立予金は、広島一般労働組合広島工業支部という団体の名称で各人の積立金額を一括して団体予金されるところとなり、以後毎月各人による一定額の積立金を団体予金の形で継続して積み立てる一方、その後も発生した広島工業株式会社の賃金遅配の時には、右予金を担保にして労働金庫から借り入れた金員で賃金の補填をしていた。

(二)  控訴人組合は、従来さん下の各支部組合員が各支部毎に前同趣旨のもとに積み立てていた予金ならびに今後の積立金を控訴人組合本部に集中したうえ、本部が一括して積立運用することが争議対策上から得策であるとの見地から、昭和三七年一一月開催の控訴人組合の定期大会において、従前各支部組合員によって各支部毎に積み立てられていた予金ならびに今後の積立金を控訴人組合本部に集中し、本部において一括したうえ控訴人組合名義で予金し、これが運用を控訴人組合本部が行う旨の提案がなされ、右大会で可決承認され、右各支部組合員から積立預託される金員の処理に関し積立斗争資金会計処理規則を定めるなどして、各支部に対し積立予金の本部一本化を呼びかけた。

(三)  被控訴人らのうち控訴人組合に加入していない前記古田、景山、生田の三名を除くその余の被控訴人らの所属する広島一般労働組合広島工業支部は、控訴人組合長佃友一の働きかけにより、当時広島工業支部の支部長であった被控訴人佐々木弘が中心となって、広島工業支部名義で団体予金をしていた各予金者に諮り、その承認を得て、右団体名義で積み立てた予金ならびに今後の積立金を控訴人組合本部へ預託することとし、別紙預託金計算書(二)記載のとおり、同年一二月六日それまで労働金庫へ予金積立していた非組合員である前記三名の被控訴人を含む被控訴人らに対する金員を被控訴人らに代行して控訴人組合本部へ預託し、その後も毎月の各人の積立金を広島工業支部の名称で前同様の方法で継続預託していた。

(四)  右預託金は、控訴人組合本部の取扱いにおいては、「積立斗争資金」と名づけられ、本部が一括したうえ従前より取引のある朝銀広島信用組合に定期予金若くは普通予金として予金積立が行なわれる一方、各支部から本部ヘ一括される預託金につき、前記積立斗争資金会計処理規則の処理方法にもとづき、各預託者の所属する各支部が各人の積立状況を明確にするための明細表を作成することとし、広島工業支部にあっても、被控訴人らの積み立てる金員について預金者名簿を作成して、本部へ預託する金額の個人別積立額を掌握していた。右のとおり本部に集中される預託金は、本部の取扱上は積立斗争資金と指称されながら、控訴人組合さん下の支部の中には、本部へ預け替えすることなく引続いて支部独自で予金積立をするところもあり、また、右のような積立を全然していない支部もあった。そして、広島工業支部は、前記のとおり被控訴人らの毎月の積立金を本部へ預託する一方、広島工業株式会社が従業員に支給する賃金遅配をした時は、控訴人組合本部より、控訴人組合名義で一括して朝銀広島信用組合に預け入れた預金を担保にして借り入れた金員の提供をうけ、これを被控訴人らの遅配賃金に補填していた。

(五)  一方、控訴人組合本部へ集中される預託金の利息については、前記の本部への預託に切りかえる際、その利率を幾らにするという明示的な話合いはなされなかったが、控訴人組合は、広島工業支部の名称で積み立てられる被控訴人らの預託金だけでなく、他のさん下各支部からの預託金も合わせ、これら預託金については、前記積立斗争賃金会計処理規則に則り、控訴人組合の取引金融機関である朝銀広島信用組合へ控訴人組合名義で一括して定期予金若くは普通予金のいずれかの形で予金し、右各予金に対して発生した利息は、外形上は控訴人組合名義の予金利息として計上されるが、実質的には各預託者の積立金に対する利息である点に鑑み、控訴人組合としても、右定期予金および普通予金に対する受取利息の合算した額を各預託者に対する預託金額の割合に応じて利息金を還元していた。そして右の還元率は、控訴人組合名義で預け入れる予金のうち定期予金と普通予金の割合の大小により受取利息額に差を生ずる関係から、一定期間に発生した利息金の還元率も定期予金に対する利率を上限、普通予金に対する利率を下限とし、その範囲内において一定しない状況にあった。

(六)  広島工業支部は、昭和四〇年一二月広島工業株式会社から支給さるべき年末手当が遅配になる情勢下にあって、控訴人組合本部に対し約二五〇万円の融資を申し入れたが、本部が広島工業支部の名称で預託されている金額との均衡上要求通りの額の融資には応じられないとして断ったため、広島工業支部所属の組合員の中には、本部の右処置に不満を抱く者が続出し、加えて、平素から控訴人組合の労働運動に対する思想的な問題も重なって、同年一二月一七日広島工業支部所属の組合員のうち四名を除く被控訴人ら五六名が控訴人組合を脱退することを申し合わせ、その頃控訴人組合に対し右脱退を通告した。そして、右脱退通知時における被控訴人五六名の前記積立預託金ならびに右同時点における非組合員である被控訴人古田、景山、生田の前記積立預託金の各個人別預託金額は、別紙個人別預託金計算書(二)記載のとおりである。

以上のとおり認められ(る。)≪証拠判断省略≫

二、ところで、被控訴人らが広島工業支部の名称で控訴人組合へ積み立てた右の預託金の利息について、被控訴人らは、控訴人組合が定期予金並みの年五分六厘の利率による一年毎の複利計算による利息の支払を保証したと主張し、一方控訴人は、右預託金を控訴人名義で一括して控訴人の取引金融機関たる朝銀広島信用組合へ預金することにより発生した利息は、預託者各個人に対する利息として還元されるのではなく、右利息の処分はすべて控訴人組合の大会、役員会で処分が決せられ、控訴人組合さん下の各支部に対する交付金という形で還元し、各支部は支部機関の決定によりその用途を自由に定めうる仕組みになっていて、通常は支部機関の行動費として使用されるのが実情であると争うので、この点につき検討を加える。

(一)  ≪証拠省略≫によれば、広島工業支部の名称で控訴人組合本部へ預託された前記預託金につき、中途で退職した預託者に対する預託金の払戻しは、広島工業支部で調製している前記預金者名簿にもとづき、右支部において払戻請求者に対し払戻時までの積立金額を集計したうえ、各積立時以降の利息として年五分六厘の利率による利息金を付加した金額を計上し、右元利金を控訴人組合へ払戻請求する方法に代えて、広島工業支部という名称で同支部から控訴人組合へ預託する当該月の預託金額より相殺勘定をしたうえ、その差額を控訴人組合へ預託し、右元利金を退職者に支部が直接支払う取扱いをしていたことが認められる。右被控訴人佐々木弘本人の尋問の結果中には、控訴人組合代表者佃友一が年五分六厘の利率による利息の支払を保証した趣旨の供述もあるが、右供述は、前記第二の一の認定事実と控訴人代表者佃友一の供述に照らし信用し難いところであり右のような広島工業支部の取扱いについても、控訴人組合としては、広島工業支部の名称で毎月預託される預託金の総額のみを把握し、現実に預託される額を当月分の預託金額として処理し、広島工業支部が行う退職者に対する払戻処理に関し、利息を幾らの利率により支払ったかということを十分掌握していなかったこと(この事実は≪証拠省略≫により認める)ならびに前記第二の一で認定したとおり、控訴人組合は各支部の名称で毎月預託される預託金を定期予金若くは普通予金として預け入れ、必ずしも全額定期予金に預け入れるものでない事実に徴すると、広島工業支部が退職者に対し、右のとおり定期予金利息の利率と同率の年五分六厘の利率による利息計算の処理をしていた一事をもって、直ちに控訴人組合が右利率による利息支払を保証していたものとは認め難く、他に被控訴人らの右主張事実を認めるに足る証拠はない。

(二)  一方、≪証拠省略≫中には、控訴人組合に預託された前記の預託金は控訴人組合名義で一括して朝銀広島信用組合へ定期予金若くは普通予金として預けられ、これら予金に対し発生する利息金の処分は、控訴人組合の大会または役員会の承認を得て各支部に対する交付金という形で各支部の預託金額の割合に応じて還元せられ、各支部は当該支部機関の決定により自由に用途を定め、通常支部機関の行動費に充てられていて、各預託者個人に対する利息という形では支払われていない旨の供述があるが、控訴人組合が大会決議を経て定めた積立斗争資金会計処理規則には、前述のとおり、本来個人の積立予金的性質をもつ預託金につき発生する利息の処分について何ら規制を加えておらず、むしろ、右処理規則上からは、右預託金について生ずる利息は各預託者に対し還元することを当然の前提としているものと認められること等に徴し、右の各供述はたやすく信を措き難いところである。また、≪証拠省略≫には、預金利息の受領宛名が広島工業支部名義となっているが、既に第二の一で認定した本件預託金に対する控訴人組合と各支部との間の処理方法の実態に鑑みると、右は会計の処理上便宜的に支部名義を使用しているに過ぎず、これをもって各預託金の積立を行った被控訴人らの預託金に対する還元利息であると認めることの妨げとはならず、他に控訴人の右主張を首肯さすに足る証拠はない。

三、以上第二の一、二で認定した事実によれば、被控訴人らの前記預託金に対する利息について、幾らの利率を保証するかという点に関する明示的な話合いはなかったものの、預託金に対し利息を付する(還元する)ことは、両者とも当然のこととして預託関係をもち、ただ現実に幾らの利率による利息を還元するかについては、控訴人名義で一括預け入れられた定期予金および普通予金に対し発生する利息合計額を、各預託者の預託金額に比例して還元するという最少限の枠内で、控訴人組合にその処理が一任されていたものと認めるのが担当である。

第三控訴人の抗弁に対する判断

一、控訴人は、控訴人組合に加入していない被控訴人古田、景山、生田を除くその余の被控訴人らの組合脱退は、広島工業株式会社の使用者の控訴人組合に対する不当労働行為に基づき、御用組合を結成する目的でなされた集団的脱退であるからその脱退通告があったに拘らず、脱退としての効力は生せず右脱退の有効なことを前提とする同被控訴人らの預託金(控訴人の主張する積立斗争資金、以下同様)返還の請求は失当であると主張するが、労働組合からの脱退は、その旨の通告だけで効力を生ずるものであって、脱退の動機目的等の如何により脱退の効力が左右されるものとは解し難く、本件にあっては、前記被控訴人らが昭和四〇年一二月一七日頃控訴人に対し脱退通告をしたことは当事者間に争いがないのであるから、同被控訴人らは適法に控訴人組合から脱退したものと解するのが相当であって、控訴人の右主張は既にその前提において採ることができない。

二、控訴人は、前記被控訴人らの控訴人組合からの脱退について控訴人組合において当該被控訴人ら各自の脱退の意思を確認しない以上、同被控訴人らの預託金の返還には応じられないと主張するが、同被控訴人らがいずれも控訴人に対し脱退の意思表示をしたことは前述のとおりであって、右の脱退意思の表示が控訴人に対しなされた以上、他に特段の事由のない限り、その表示内容の意思を伴った表示行為と認めるのが相当であって、右脱退の意思表示が本人の真実の意思でないと争う控訴人としては、右の点につき積極的に立証を要するものというべきところ、かかる事実を認めるに足る証拠は皆無であり、他に脱退意思の確認を経ない限り脱退通告者の預託金返還請求を阻止できるとする合理的事由の主張立証のない本件にあっては、控訴人の右主張は到底採用することができない。

三、つぎに、控訴人は、本件預託金の返還は、その積立の制度的な趣旨等からして、控訴人組合の組織活動、運動方針および規約に違反しない止むを得ない理由による組合脱退の場合に限られ、控訴人組合の組織を弱体化する意図のもとに集団的脱退をした前記被控訴人らに対しては預託金を返還する義務がないと主張するが、右預託金に関する控訴人組合の積立斗争資金会計処理規則には、その払戻請求に関し何ら右の如き制限事由を規定していないのみならず、前述のとおり、右の預託金は預託者各自の自由意思により積み立てられた個人の予金的性質をもつ金員であって、組合員として一様に拠出する組合費、資金カンパ等組合財産に組み入れられるものとはおのづから性質を異にし、かかる個人的な財産に対する制約は当該預託者の同意のない限り許されないものといわねばならない。そして、本件において、前記被控訴人らが適法に組合を脱退したものであることは既に述べたところであるから、右脱退に伴う同被控訴人らの預託金の返還請求について控訴人主張のような事由をもって返還を拒むことはできず、控訴人の右主張は理由がない。

四、また、控訴人は、被控訴人らの預託金の払戻については、控訴人組合の積立斗争資金会計処理規則によると、所定の払戻請求書に必要事項を記入したうえ所属支部責任者の承認を得て控訴人組合に提出請求しなければならないことになっているが、被控訴人らはいずれも右手続に則った請求をしていないから、右の払戻(返還)請求には応じられないと主張する。

成立に争いのない乙第三号証の一、甲第四号証の一(積立斗争資金会計処理規則)の第一三条には「斗争資金の払戻を請求する場合は正規の払戻請求書に必要事項を記載のうえ責任者の承認を得て組合に請求書を提出する」とあり、また、その第九条には「支部長は斗争資金の受入払戻しおよび担保に供した場合の借入など金銭を取扱う責任者三名をあらかじめ組合に届出るものとする」とあって、払戻の場合の手続が定められていることが認められるが、同じく右処理規則第一七条には「組合員所属支部の責任者は各組合員の預託状態を明示する明細表を作成しなければならない」とあって、右は、各預託者の預託金を所属支部の名称で一括して控訴人組合本部へ預託し、本部では各預託者の預託状況を逐一掌握しない処理方法をとっていることに対応する規定であることは既にみたところである。そして、前述の預託者の所属支部と控訴人組合本部との間における預託金に関する取扱方法、預託金の性質ならびに右積立斗争資金会計処理規則の全趣旨を合わせ考えると、前記の如く、処理規則第九条第一三条による所属支部責任者の承認を得て請求書を提出させる所以のものは、本部においては各預託者の明細が判らないため、これを掌握している所属支部(具体的には当該支部の取扱責任者)をして、払戻を求める預託者の預託金額を確認させる必要があることによるものと認められるところ、預託者が訴訟の形で預託金の返還請求をする場合、該訴訟手続内で預託金額が確定されるのであるから、前記支部責任者の承認がなくとも手続的規制の目的は十分達せられるものというべく、加えて、預託者である被控訴人らが前記所定の手続を踏んで払戻請求をしたとしても、控訴人に払戻の意思のないことは弁論の全趣旨に徴し明らかな本件にあっては、被控訴人らが事前に右の手続を踏んだ預託金払戻の請求をしていないことを理由に、本訴において右払戻(還付)請求を拒絶することはできないものといわねばならない。従って、控訴人の右主張も理由がない。

五、つぎに控訴人主張の相殺の抗弁について判断する。

≪証拠省略≫によれば、控訴人が広島工業株式会社を相手として、控訴人主張の差別的取扱いを理由に広島地方労働委員会に対し、不当労働行為の救済申立をしていることが認められるが、被控訴人らとの関係において、被控訴人らが右使用者と結託し使用者をして控訴人主張のような差別的取扱いをなさしめたとの点につき、これを認めるに足る証拠は全く存しないから、控訴人が右により精神的、物質的損害を蒙ったとしてもこれを被控訴人らの責に帰することはできない。従って、被控訴人らに対する損害賠償請求権の取得を前提とする控訴人の右相殺の主張も理由がない。

第四本件預託金に対する利息金の認容限度

前記第二の一の(五)、第二の三で認定したとおり、被控訴人らが広島工業支部の名称で控訴人に預けた本件預託金に対する還元利息については、控訴人組合名義で金融機関に預け入れる預金につき、定期預金と普通予金の割合の大小によりその受取利息額に差を生じ、控訴人組合が預託者に対しそれぞれの時期に還元する利息金の還元率は、定期予金に対する利率を上限、普通予金に対する利率を下限として、その範囲内で一定していないことが認められるところ、被控訴人らは本件預託金について、その預託期間中控訴人組合から還元をうくべき利息金の還元率につき適確に立証するところがないから、本件預託金にあっては、最小限普通予金に対する利率をもって還元率と認めるのが相当である。

そして、臨時金利調整法(昭和二二年法律第一八一号)第二条第一項に基づき金融機関の金利の最高限度を定める告示(昭和二三年一月一〇日大蔵省告示第四号)第二項(但し昭和三六年三月三一日同省告示第八七号による改正によるもの)によれば、昭和三六年四月一日以降における普通予金に対する金融機関の金利の最高限度は日歩六厘であるところ、控訴人組合の取引金融機関である朝銀広島信用組合を含めた信用金庫、信用協同組合、農業協同組合等の普通予金の預り利息の利率が、右告示による最高限度である日歩六厘であることは公知の事実であるから、右利率によって本件預託金の利息計算をなすべきことになる。ところで、被控訴人らが本訴提起前控訴人に対し預託金の返還を求めたことは、原審における被控訴人佐々木弘本人の尋問の結果により認めうるが、その返還請求をした時期についてはつまびらかでないから、被控訴人らの本件訴状が控訴人に送達されたこと記録上明らかな昭和三一年二月一八日をもって履行期が到来したものというべく、右の範囲内で被控訴人らが利息発生期間として請求する昭和四一年一月三一日までの間に生じた被控訴人らの本件各預託金の利息は、別紙預託金計算書(二)記載のとおりである。

第五結論

以上の理由により、被控訴人らが控訴人に対し別紙預託金計算書(二)記載の各元利金および同各元金に対する履行期後である昭和四一年二月一九日以降完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当として認容すべきであるが、その余の請求は失当として棄却すべきである。従って、原判決は右のとおり変更を免れない。

よって、民事訴訟法九六条、九二条一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 辻川利正 丸山明 裁判長裁判官宮田信夫は転任のため署名押印することができない。裁判官 辻川利正)

〈以下省略〉

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